最上敏樹

湾岸戦争この方、バブルのようにくり広げられてきた「正義」の横行を、一度見直すベき時が来たのではないか。肥大した正義は問題の解決にならない。しかもその正義が第三者の判定を受けないなら、多国間の秩序は一層不安定になるだろう。そこにおいて、国連平和体制の基本原理であったはずの多国間主義も、「帝国」の行動を掣肘するような原理として働くとは限らないことが明らかになりつつある。残された希望は、それでも多国間の枠組みを活用して無益な戦争を避けようとする国々と、公式の多国間枠組みの外で戦争反対を唱える人々である。国際社会の「多数意思」は、いまや公式の多国間枠組みを見ただけでは判断できなくなっているのだ。